てめえらの血はなに色だ

外来勤務が始まり3日目が終わった。朝から指導役に「今日は採血やってもらおっかな!」と言われ、とうとう来たかと言う感じだった。
病棟でも採血はもちろんあった。入院患者は1週間に1回〜2週間に1回のペースで定期採血をする。夜勤明けの朝方、多いときで5人程度。院内の内科所属だったかつての同期の話からすると、少ない方だと思う。また上記のスケジュールと、入院が毎日来るわけではない特性から、下手をすれば採血のない夜勤もあった。
そんな微妙な経験の中での採血勝率を思い出すと、70%くらいか。採血は、血管さえ見つかれば取れるが、その血管を見つけるというのが難しかったりする。ご老体でもしっかり太い血管が表在している人もいれば、若くてもむちむちしすぎて血管行方不明になっている人もいた。正直、後者で戦績をあげた記憶がない。ただ、異常に苦手とも言うわけでもなく平均の少し下くらい。だから、やろうと思えばたぶんできるだろうくらいの心持ちだった。 

3ヶ月ぶりの私の採血の生贄となったのは男性患者だった。若めの人で血管も分かりやすい。また、病棟ではコストの観点からホルダー付き採血針という苦手なタイプの針が推奨されていてたが、外来では安全性の観点から翼状針という神の道具が推奨されていた。
刺す瞬間に一瞬緊張をしたが、刺してしまえばあっさり4本分取れた。駆血帯を外さずに針を抜くようなマネも流石にしなかった。無事終わり、待合室へ患者を送り出した。
その後も何人か採血し、最後の1人だけ針の角度を見誤り血液が引けずに交代をお願いしたが、それ以外は何とかこなせた。

採血の成功は素直に嬉しかった。技術は身体が覚えている、というのは正しくそうだと体感した。
よくよく考えると、人に針を指して血を見て喜ぶ人間、いやカエルというのは客観的に危ない感じもするが。医師もそうだが、看護師というのも、必要性からとはいえ合法的に人に侵襲を与えるやべぇ奴という側面があるので、そこへの抵抗感はないんだなあ、などと自分の事を振り返った。